SSブログ

技術士総合技術監理部門 口頭試験の記録 [資格・お勉強]

この度、技術士総合技術監理部門に合格することができました。
口頭試験に対して様々な対策を行って臨みましたが、先達の方々
が公開している口頭試験体験談の情報が大変役に立ちました。
そんなわけで、これから目指す人のご参考のため、僕も自分の
口頭試験の記録を公開しておこうと思います。

なお、過去に取得した一般部門の口頭試験の記録は、下記と
なります。(最新の一般部門の口頭試験では、過去とは採点方法
が変わっておりますのでご注意下さい。)

・技術士電気電子部門の口頭試験の様子
https://highbusy.blog.ss-blog.jp/2013-12-14


----------------------------------------------------------

■技術士総合技術監理部門(電気電子ー電子応用)
口頭試験
2021/02/28(日) @渋谷 フォーラム8
試験開始時刻:15:15

筆記論文を突破し、本日いよいよ、総監のファイナルステージ
に臨みます。一世一代の大勝負です。

遅刻は交通機関の乱れなども含め、いかなる理由でも認められ
ません。過剰に早く渋谷入りしました。渋谷駅着12:30。時間
調整のため、試験会場近くの貸会議室を予約してあります。
ロッテリアで昼食を買い、12:45に貸会議室に入りました。周囲
に気兼ねなく最後の追い込みができます。

食事をしながら自作の想定問答集を読んで記憶したり、食後は
面接のイメージトレーニングと発声練習などを行って過ごし
ました。14:45まで、みっちりと直前対策ができました。
貸会議室のアイディアは、事前に先輩からアドバイスを貰って
いました。他に、カラオケボックス内で練習する手もある
らしいですが、コロナ禍のため敬遠しました。

さて、試験会場のフォーラム8です。受付後、大会議室で待つ
ように指示されましたが、試験直前の受験者が集っており、
相変わらずの緊張感漂う重苦しい部屋でした。試験開始10分
前に、自分の受験する会議室の前に移動します。会議室前の
椅子に座って待っていると、前の受験者が出てきて、ほどなく
試験官が部屋に招じ入れます。

15:15、時間通りの試験開始です。コロナのため試験官も受験者も
マスク着用。間に透明な間仕切りがあり、双方で声が聞こえ
にくいという不便がありました。

-------------------------------
・試験官(3名)
左(A):小太り、50歳中盤か、大学教授風
中央(B):やせ型で白髪、60歳くらいか、学者風。
右(C):桂三枝似、50歳あたりか、技術屋風。
-------------------------------

B:そちらの椅子に荷物を置いて、前の席にお座り下さい。

B:では総合技術監理部門の口頭試験を始めますので、
 受験番号とお名前をお願いします。

私:XXXXXX番 ○○○○です。よろしくお願いします。

A:では早速ですが、○○さんの書いた業務詳細について、
 お教え下さい。一言で言うと、どのような業務ですか?

私:□□にフルセグTVの機能を搭載する設計について、
 設計責任者として、業務を管理しました。

A:フルセグTVって、何ですか?

私:モバイル用TV用のワンセグに対し、フルセグはご家庭の
 TVで見られるハイビジョン映像のTVとなります。

A:ああ、普通の家のTVのことね。
 ソフトウェアは発売後にアップデートで対応したとのこと
 ですが、ハードウェアはどのような点がこのプロジェクトの
 ゴールだったのでしょう?

私:製品の設計を完了し、量産立ち上げを果たすことが
 プロジェクトのゴールです。

A:プロジェクトのゴールの成果は、どのように確認したの
 でしょうか?

私:設計については、評価を行い、チェックシートにより所望の
 機能と性能が得られていることを確認しました。
 量産については、問題ない生産品質で量産が立ち上がるところ
 まで確認しました。

A:評価を行う、とは、どういうことでしょうか?

私:あ、はい。試作品を使って評価を行っております。
 設計完了までに3回ほどの試作を実施しております。

A:ああ、途中で試作を行っているのね。量産までの間、
 設計が要求品質を満たしているかどうか、どのように管理
 しましたか?

私:各試作ごとにあるデザインレビューにて、顧客要求を満た
 しているかどうかをチェックし、問題があれば次回試作
 に反映し、最終的に問題無しの状態にて量産を開始できる
 よう、管理して進めました。

A:量産が開始されたら、それで業務は終わりですか?

私:いいえ、高い品質で量産できるよう、工場に対してサポート
 は行います。ある程度の期間は生産品質の推移はモニタして
 いくこととなります。

A:量産ラインとかも作るのですか?

私:いえ、ラインは設計部門では作りません。設計部門からは
 品質要求、検査要求を出すと、工場側のエキスパートが最適な
 量産ラインを構築してくれますので。

A:わかりました。はい、私はこれで結構です。

B:それでは、改めてとなりますが、業務詳細について、総監の
 視点での全体説明をお願いします。

私:私は2013年に□□にフルセグTV機能を内蔵するプロジェクト
 の、設計責任者を務めました。
 業務の課題は、求められる品質に対して、フルセグ視聴ソフト
 ウェアの納期が間に合わないことと、フルセグのハードウェア
 評価の工数が足りない、という2点でした。
 前者は顧客と納期折衝を行い、発売日当日ではなく後日の
 ソフトウェアアップデートによる対応を了承いただき、対応
 しました。
 後者は、他部門の人員工数を、OJTを提供する形で動員して
 対応しました。結果、このプロジェクトを成功に導きました。

B:発売日の時期と、ソフトウェアアップデートの時期を教えて
 下さい。お客様をどれだけお待たせしたのかなと思いまして。

私:2013年の6月に端末発売、8月にアップデートだったと記憶
 しております。お客様を2ヶ月お待たせしたことになります。

B:アップデート後に発売されたこの製品は、最初からフルセグ
 に対応されていたのですね?

私:いいえ、この製品については、アップデート後に新品を
 ご購入されたお客様も、アップデートの作業を実施していた
 だく形となりました。この機種の次の新機種からは、
 キッチリと最初からフルセグに対応する形となりましたが。

B:なるほど、そういうことですね。どうでしょうか?
 (試験官Cを見て)

C:うーん。これではあなたの業務がよくわからないんだよね。
 実際何を管理していたの?

私:本プロジェクトにおいて、納期内に十分な品質を持った
 製品を出せるよう、納期調整並びに工数管理を行いました。

C:納期を満たしました、と言っても、やっていることは能が
 無い気がするんだけどね。あと、ここにはソフトウェアに
 ついて、あまり深く書かれていないけれど。

私:私はソフトの専門家ではありませんが、メンバーにソフト
 ウェアのリーダが居て、都度相談、意思疎通してスケジュール
 等管理していました。ですが、あくまで私が上で取り纏める
 役でした。

C:あなた、設計責任者なんじゃないの? 詳細を把握できて
 いなかったのに、よく管理できたものだね。

私:立場上ハードウェア、ソフトウェアともに私が取り纏める
 立場にありました。ソフトウェアについてはリーダーを信頼
 して一任しておりました。ハードの方は上から下まで私が見て
 詳細を把握しておりましたが。

C:ソフトウェア開発の規模は?

私:えーと、すみません。規模と仰いますと、どのような意味
 でしょうか?

C:開発にかかる工数のことだよ、工数。何人月必要だったの?

私:社員2名で6カ月、計12人月となります。その下にオフショア
 があり、外注も使っていましたが、トータルで掛かった総工数
 までは把握できておりません。

C:そこを把握できていないとは、総監としてどうかと思う
 けどね。
 ソースコード全てを把握しろ、とまで言っているわけじゃあ
 ないんだよ。でも総工数がわからない、じゃあ管理も何も
 あったものじゃないでしょう?

私:はい。仰る通りです。詳細はソフトウェアのリーダーに
 任せておりましたので。

C:たったの12人月で大丈夫なの?
 下請けがどの程度かは知らないけど、期間が短か過ぎて、
 まともなソフトが完成できるとは到底思えないな。

私:はい。仰る通り、一から作ったのでは完成はできないと思い
 ます。下地として、既にワンセグTVの視聴ソフトウェアは完成
 させておりましたので、その上でフルセグ機能を実装すること
 で、この工数で達成できております。

C:FPGAは使ったの?

私:いいえ、既製品のTV Tuner ICを使用し、画像処理などは
 □□が元から備えているプロセッサを使用しますので、
 FPGAを使うことはありませんでした。

C:ああ、既に市販されている部品を組合せて使ったのね。
 であれば、テレビなんて簡単にできちゃうんじゃないの?
 工数が足りなくなるなんてことは無かったのでは?

私:実際には想定外のトラブルがありまして、工数が足りなく
 なりました。

C:どのような想定外が、どうして発生したの?

私:周囲からのNoiseの影響で、TVの受信感度が落ちる問題が
 発生しました。□□の中には様々なデバイスがあり、想定外の
 レベルのNoiseにより、TVが妨害を受けてしまいました。

C:想定外と言ってもあなたね、設計時にあらかじめ予見でき
 なかったの?  シミュレーションとかちゃんと実施して
 いなかったのでは? 
 作ってみるまでわかりません、では全然駄目だと思うん
 だけどね。

私:ある程度のシミュレーションは実施しておりますが、
 当時はそれほど高い精度で実施できたわけではありません
 でした。特にNoiseのシミュレーションは、現在でも難しい
 課題です。

C:ふーん、それで工数が足りなくなった、と。

私:はい。その通りです。

C:で、他部署の工数を動員したんだよね? ここで他所の
 人を使って自部署と同一の業務の品質が担保できると思って
 いたわけ?

私:確かに自部署のメンバーと比べ、スキルは同レベルでは
 ありません。ですが、評価業務ですので、チェックシートを
 使って一元管理するような情報管理を行うことにより、
 抜け漏れ無く問題無い品質で進めることができました。

C:ふーん、専門では無い人をねー。ああ、あなたの経歴票の
 中に技術士電気電子部門を取得した、と書いてありますが、
 いつ取得しました?

私:2014年です。

C:今回の業務詳細に書かれている業務よりも後のタイミング
 なのね。…私からは以上です。

A:2014年に電気電子の技術士を取得した後は、どのように
 業務に当たっていましたか?

私:主に□□にフルセグTVを搭載するプロジェクトの設計責任者
 を務めておりますが、自分の専門を見るのみならず、業務
 全体を全て見て最適に進むよう技術監理を行っております。

A:このプロジェクトの意義として、監理が上手く行った、
 ということ以外で評価できる点は何ですか?

私:業界初の試みを成功させた、という点が評価できると考えて
 います。

A:業界初ということですが、そもそも今回のプロジェクトが
 行ける、と事前に判断できた理由は何ですか?

私:それ以前の経歴で、ノートパソコンにフルセグTVを搭載する
 業務を体験しておりまして、その時に成功していますので、
 類似である今回の業務も行けると判断しました。

A:でも、実際は想定外のことが起こった、ということですね?

私:□□に搭載する、というところで知見が足りておらず、想定外
 が生じてしまいました。

A:ソフトウェアは後日のアップデート、ということですが、
 ソフトウェアに関して途中の管理とかはありましたか?

私:後日アップデートすることを前提に、量産時点であらかじめ
 仕込んでおかなければならないファームウェア等もありました
 ので、このタイミングまでにこの実装が必要、という管理を
 キッチリ行って進めました。

A:はい、私はこれでOKです。

B:市場でソフトウェアアップデートで対応ということで、
 お客様のところでアップデートに失敗する恐れは無かった
 のでしょうか?

私:実際の市場でこのような事故はありませんでしたが、最初
 のリスクアセスメントにおいて、確かにこのリスクは挙げ
 ました。
 対応方法としては、起動しなくなったセットは新品交換で
 対応する、が最も妥当的な対応方法と結論付けました。

B:総監ですのでトレードオフについて当然管理しなければ
 なりません。今回のプロジェクトにおいて、記載している事項
 以外のトレードオフはありませんでしたか?
 5つの管理全てを挙げる必要はありませんが。

私:設計業務ですので経済性管理内のトレードオフばかり
 でしたが、例えば社会環境管理と経済性管理のトレードオフ
 はありました。
 低消費電力の回路設計により、地球温暖化防止に寄与できる
 わけですが、今回は工数が足りず、低消費電力を追求した
 回路を設計することができませんでした。

B:実現できないと、大きな問題があったのでしょうか?

私:いえ、消費電力が増えてしまうというだけで、プロジェクト
 自体が失敗する、ということはありませんでした。

B:では、話は変わりますが、今回総監を取得したら、
 今後何をしたいですか?

私:総監の受験動機ですが、私は将来子供達に科学技術の面白さ
 や大切さを伝えるような仕事をしたいと考えています。
 そのため、技術の最高峰である技術士の総合技術監理部門を
 取得したいと考えております。
 ゆくゆくは開業したいと考えています。

B:そのために、今行っていることは?

私:現在はどのように進めようか、考え中です。過去の話となり
 ますが、数年前に、夏休みに小学生に技術を教える教室の
 スタッフを務めたことがあります。ここで子供達に無限の
 可能性があることに気付きました。
 このような子供達に教えられる機会があれば、どんどん参加
 していきたいと考えています。

B:なるほど、わかりました。それでは試験は以上になります。
 お疲れ様でした。

私:ありがとうございました。よろしくお願いします。

- 計23分 -


今回の口頭試験は業務詳細に関する質問に始終しました。
筆記試験の内容、他の業務経歴について、コロナなどの今どき
のトピック、仮想事例などは一切試問されませんでした。
これはひとえに受験申込時の業務詳細の記載の詰めが甘く、
その弱点を突かれた形でした。申込時に受験は始まっている、
ということを改めて実感した形です。

試験官Cの質問に対して、防戦一方でしたため、試験中は不合格
を覚悟しました。試験終了後も、きっと不合格だな…と予期
しながら帰路に就きました。ですが、後日、この口頭試験再現を
書き起こしてみると、23分間とは思えないほど、かなりの量の
Q&Aをこなしていたことに気付きました。

試験結果は合格だったわけですが、試験官Bが助け舟的に様々な
質問を出して下さったことが大きかったと考えます。私が早口
だったことは悪い点でしたが、それでも沢山の問答ができた
という点では、少し有利に働いたと思います。

簡潔に答えて次々と質問を出してもらう、という手法が重要で
あることを改めて認識しました。採点方法は明らかにされて
いませんが、加点法(=あるレベルに達したら合格)であることが
通説となっておりますため、旗色の悪い試問は諦めて降参し、
すぐに次の試問をしてもらう…のスタイルが良いですね。
また、途中で決して諦めず、最後まで打ち返すことが大切です。

技術士受験の都市伝説によると、口頭試験中に合格点に達したら
「技術士を取った後は何をしたいか?」の質問が出る…という
話があります。
今回まさにその質問が出たわけですが、そう言えば以前に電気
電子部門を受験した時にも同様の質問が出て、結果合格したこと
を思い出しました。まあ、この都市伝説は話半分で。。。


総監を目指して頑張られている方にとって、本稿が少しでも
お役に立てれば幸いです。

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:日記・雑感

nice! 0

コメント 0

コメントを書く

お名前:
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。