技術士総合技術監理部門 口頭試験の記録 [資格・お勉強]
この度、技術士総合技術監理部門に合格することができました。
口頭試験に対して様々な対策を行って臨みましたが、先達の方々
が公開している口頭試験体験談の情報が大変役に立ちました。
そんなわけで、これから目指す人のご参考のため、僕も自分の
口頭試験の記録を公開しておこうと思います。
なお、過去に取得した一般部門の口頭試験の記録は、下記と
なります。(最新の一般部門の口頭試験では、過去とは採点方法
が変わっておりますのでご注意下さい。)
・技術士電気電子部門の口頭試験の様子
https://highbusy.blog.ss-blog.jp/2013-12-14
----------------------------------------------------------
■技術士総合技術監理部門(電気電子ー電子応用)
口頭試験
2021/02/28(日) @渋谷 フォーラム8
試験開始時刻:15:15
筆記論文を突破し、本日いよいよ、総監のファイナルステージ
に臨みます。一世一代の大勝負です。
遅刻は交通機関の乱れなども含め、いかなる理由でも認められ
ません。過剰に早く渋谷入りしました。渋谷駅着12:30。時間
調整のため、試験会場近くの貸会議室を予約してあります。
ロッテリアで昼食を買い、12:45に貸会議室に入りました。周囲
に気兼ねなく最後の追い込みができます。
食事をしながら自作の想定問答集を読んで記憶したり、食後は
面接のイメージトレーニングと発声練習などを行って過ごし
ました。14:45まで、みっちりと直前対策ができました。
貸会議室のアイディアは、事前に先輩からアドバイスを貰って
いました。他に、カラオケボックス内で練習する手もある
らしいですが、コロナ禍のため敬遠しました。
さて、試験会場のフォーラム8です。受付後、大会議室で待つ
ように指示されましたが、試験直前の受験者が集っており、
相変わらずの緊張感漂う重苦しい部屋でした。試験開始10分
前に、自分の受験する会議室の前に移動します。会議室前の
椅子に座って待っていると、前の受験者が出てきて、ほどなく
試験官が部屋に招じ入れます。
15:15、時間通りの試験開始です。コロナのため試験官も受験者も
マスク着用。間に透明な間仕切りがあり、双方で声が聞こえ
にくいという不便がありました。
-------------------------------
・試験官(3名)
左(A):小太り、50歳中盤か、大学教授風
中央(B):やせ型で白髪、60歳くらいか、学者風。
右(C):桂三枝似、50歳あたりか、技術屋風。
-------------------------------
B:そちらの椅子に荷物を置いて、前の席にお座り下さい。
B:では総合技術監理部門の口頭試験を始めますので、
受験番号とお名前をお願いします。
私:XXXXXX番 ○○○○です。よろしくお願いします。
A:では早速ですが、○○さんの書いた業務詳細について、
お教え下さい。一言で言うと、どのような業務ですか?
私:□□にフルセグTVの機能を搭載する設計について、
設計責任者として、業務を管理しました。
A:フルセグTVって、何ですか?
私:モバイル用TV用のワンセグに対し、フルセグはご家庭の
TVで見られるハイビジョン映像のTVとなります。
A:ああ、普通の家のTVのことね。
ソフトウェアは発売後にアップデートで対応したとのこと
ですが、ハードウェアはどのような点がこのプロジェクトの
ゴールだったのでしょう?
私:製品の設計を完了し、量産立ち上げを果たすことが
プロジェクトのゴールです。
A:プロジェクトのゴールの成果は、どのように確認したの
でしょうか?
私:設計については、評価を行い、チェックシートにより所望の
機能と性能が得られていることを確認しました。
量産については、問題ない生産品質で量産が立ち上がるところ
まで確認しました。
A:評価を行う、とは、どういうことでしょうか?
私:あ、はい。試作品を使って評価を行っております。
設計完了までに3回ほどの試作を実施しております。
A:ああ、途中で試作を行っているのね。量産までの間、
設計が要求品質を満たしているかどうか、どのように管理
しましたか?
私:各試作ごとにあるデザインレビューにて、顧客要求を満た
しているかどうかをチェックし、問題があれば次回試作
に反映し、最終的に問題無しの状態にて量産を開始できる
よう、管理して進めました。
A:量産が開始されたら、それで業務は終わりですか?
私:いいえ、高い品質で量産できるよう、工場に対してサポート
は行います。ある程度の期間は生産品質の推移はモニタして
いくこととなります。
A:量産ラインとかも作るのですか?
私:いえ、ラインは設計部門では作りません。設計部門からは
品質要求、検査要求を出すと、工場側のエキスパートが最適な
量産ラインを構築してくれますので。
A:わかりました。はい、私はこれで結構です。
B:それでは、改めてとなりますが、業務詳細について、総監の
視点での全体説明をお願いします。
私:私は2013年に□□にフルセグTV機能を内蔵するプロジェクト
の、設計責任者を務めました。
業務の課題は、求められる品質に対して、フルセグ視聴ソフト
ウェアの納期が間に合わないことと、フルセグのハードウェア
評価の工数が足りない、という2点でした。
前者は顧客と納期折衝を行い、発売日当日ではなく後日の
ソフトウェアアップデートによる対応を了承いただき、対応
しました。
後者は、他部門の人員工数を、OJTを提供する形で動員して
対応しました。結果、このプロジェクトを成功に導きました。
B:発売日の時期と、ソフトウェアアップデートの時期を教えて
下さい。お客様をどれだけお待たせしたのかなと思いまして。
私:2013年の6月に端末発売、8月にアップデートだったと記憶
しております。お客様を2ヶ月お待たせしたことになります。
B:アップデート後に発売されたこの製品は、最初からフルセグ
に対応されていたのですね?
私:いいえ、この製品については、アップデート後に新品を
ご購入されたお客様も、アップデートの作業を実施していた
だく形となりました。この機種の次の新機種からは、
キッチリと最初からフルセグに対応する形となりましたが。
B:なるほど、そういうことですね。どうでしょうか?
(試験官Cを見て)
C:うーん。これではあなたの業務がよくわからないんだよね。
実際何を管理していたの?
私:本プロジェクトにおいて、納期内に十分な品質を持った
製品を出せるよう、納期調整並びに工数管理を行いました。
C:納期を満たしました、と言っても、やっていることは能が
無い気がするんだけどね。あと、ここにはソフトウェアに
ついて、あまり深く書かれていないけれど。
私:私はソフトの専門家ではありませんが、メンバーにソフト
ウェアのリーダが居て、都度相談、意思疎通してスケジュール
等管理していました。ですが、あくまで私が上で取り纏める
役でした。
C:あなた、設計責任者なんじゃないの? 詳細を把握できて
いなかったのに、よく管理できたものだね。
私:立場上ハードウェア、ソフトウェアともに私が取り纏める
立場にありました。ソフトウェアについてはリーダーを信頼
して一任しておりました。ハードの方は上から下まで私が見て
詳細を把握しておりましたが。
C:ソフトウェア開発の規模は?
私:えーと、すみません。規模と仰いますと、どのような意味
でしょうか?
C:開発にかかる工数のことだよ、工数。何人月必要だったの?
私:社員2名で6カ月、計12人月となります。その下にオフショア
があり、外注も使っていましたが、トータルで掛かった総工数
までは把握できておりません。
C:そこを把握できていないとは、総監としてどうかと思う
けどね。
ソースコード全てを把握しろ、とまで言っているわけじゃあ
ないんだよ。でも総工数がわからない、じゃあ管理も何も
あったものじゃないでしょう?
私:はい。仰る通りです。詳細はソフトウェアのリーダーに
任せておりましたので。
C:たったの12人月で大丈夫なの?
下請けがどの程度かは知らないけど、期間が短か過ぎて、
まともなソフトが完成できるとは到底思えないな。
私:はい。仰る通り、一から作ったのでは完成はできないと思い
ます。下地として、既にワンセグTVの視聴ソフトウェアは完成
させておりましたので、その上でフルセグ機能を実装すること
で、この工数で達成できております。
C:FPGAは使ったの?
私:いいえ、既製品のTV Tuner ICを使用し、画像処理などは
□□が元から備えているプロセッサを使用しますので、
FPGAを使うことはありませんでした。
C:ああ、既に市販されている部品を組合せて使ったのね。
であれば、テレビなんて簡単にできちゃうんじゃないの?
工数が足りなくなるなんてことは無かったのでは?
私:実際には想定外のトラブルがありまして、工数が足りなく
なりました。
C:どのような想定外が、どうして発生したの?
私:周囲からのNoiseの影響で、TVの受信感度が落ちる問題が
発生しました。□□の中には様々なデバイスがあり、想定外の
レベルのNoiseにより、TVが妨害を受けてしまいました。
C:想定外と言ってもあなたね、設計時にあらかじめ予見でき
なかったの? シミュレーションとかちゃんと実施して
いなかったのでは?
作ってみるまでわかりません、では全然駄目だと思うん
だけどね。
私:ある程度のシミュレーションは実施しておりますが、
当時はそれほど高い精度で実施できたわけではありません
でした。特にNoiseのシミュレーションは、現在でも難しい
課題です。
C:ふーん、それで工数が足りなくなった、と。
私:はい。その通りです。
C:で、他部署の工数を動員したんだよね? ここで他所の
人を使って自部署と同一の業務の品質が担保できると思って
いたわけ?
私:確かに自部署のメンバーと比べ、スキルは同レベルでは
ありません。ですが、評価業務ですので、チェックシートを
使って一元管理するような情報管理を行うことにより、
抜け漏れ無く問題無い品質で進めることができました。
C:ふーん、専門では無い人をねー。ああ、あなたの経歴票の
中に技術士電気電子部門を取得した、と書いてありますが、
いつ取得しました?
私:2014年です。
C:今回の業務詳細に書かれている業務よりも後のタイミング
なのね。…私からは以上です。
A:2014年に電気電子の技術士を取得した後は、どのように
業務に当たっていましたか?
私:主に□□にフルセグTVを搭載するプロジェクトの設計責任者
を務めておりますが、自分の専門を見るのみならず、業務
全体を全て見て最適に進むよう技術監理を行っております。
A:このプロジェクトの意義として、監理が上手く行った、
ということ以外で評価できる点は何ですか?
私:業界初の試みを成功させた、という点が評価できると考えて
います。
A:業界初ということですが、そもそも今回のプロジェクトが
行ける、と事前に判断できた理由は何ですか?
私:それ以前の経歴で、ノートパソコンにフルセグTVを搭載する
業務を体験しておりまして、その時に成功していますので、
類似である今回の業務も行けると判断しました。
A:でも、実際は想定外のことが起こった、ということですね?
私:□□に搭載する、というところで知見が足りておらず、想定外
が生じてしまいました。
A:ソフトウェアは後日のアップデート、ということですが、
ソフトウェアに関して途中の管理とかはありましたか?
私:後日アップデートすることを前提に、量産時点であらかじめ
仕込んでおかなければならないファームウェア等もありました
ので、このタイミングまでにこの実装が必要、という管理を
キッチリ行って進めました。
A:はい、私はこれでOKです。
B:市場でソフトウェアアップデートで対応ということで、
お客様のところでアップデートに失敗する恐れは無かった
のでしょうか?
私:実際の市場でこのような事故はありませんでしたが、最初
のリスクアセスメントにおいて、確かにこのリスクは挙げ
ました。
対応方法としては、起動しなくなったセットは新品交換で
対応する、が最も妥当的な対応方法と結論付けました。
B:総監ですのでトレードオフについて当然管理しなければ
なりません。今回のプロジェクトにおいて、記載している事項
以外のトレードオフはありませんでしたか?
5つの管理全てを挙げる必要はありませんが。
私:設計業務ですので経済性管理内のトレードオフばかり
でしたが、例えば社会環境管理と経済性管理のトレードオフ
はありました。
低消費電力の回路設計により、地球温暖化防止に寄与できる
わけですが、今回は工数が足りず、低消費電力を追求した
回路を設計することができませんでした。
B:実現できないと、大きな問題があったのでしょうか?
私:いえ、消費電力が増えてしまうというだけで、プロジェクト
自体が失敗する、ということはありませんでした。
B:では、話は変わりますが、今回総監を取得したら、
今後何をしたいですか?
私:総監の受験動機ですが、私は将来子供達に科学技術の面白さ
や大切さを伝えるような仕事をしたいと考えています。
そのため、技術の最高峰である技術士の総合技術監理部門を
取得したいと考えております。
ゆくゆくは開業したいと考えています。
B:そのために、今行っていることは?
私:現在はどのように進めようか、考え中です。過去の話となり
ますが、数年前に、夏休みに小学生に技術を教える教室の
スタッフを務めたことがあります。ここで子供達に無限の
可能性があることに気付きました。
このような子供達に教えられる機会があれば、どんどん参加
していきたいと考えています。
B:なるほど、わかりました。それでは試験は以上になります。
お疲れ様でした。
私:ありがとうございました。よろしくお願いします。
- 計23分 -
今回の口頭試験は業務詳細に関する質問に始終しました。
筆記試験の内容、他の業務経歴について、コロナなどの今どき
のトピック、仮想事例などは一切試問されませんでした。
これはひとえに受験申込時の業務詳細の記載の詰めが甘く、
その弱点を突かれた形でした。申込時に受験は始まっている、
ということを改めて実感した形です。
試験官Cの質問に対して、防戦一方でしたため、試験中は不合格
を覚悟しました。試験終了後も、きっと不合格だな…と予期
しながら帰路に就きました。ですが、後日、この口頭試験再現を
書き起こしてみると、23分間とは思えないほど、かなりの量の
Q&Aをこなしていたことに気付きました。
試験結果は合格だったわけですが、試験官Bが助け舟的に様々な
質問を出して下さったことが大きかったと考えます。私が早口
だったことは悪い点でしたが、それでも沢山の問答ができた
という点では、少し有利に働いたと思います。
簡潔に答えて次々と質問を出してもらう、という手法が重要で
あることを改めて認識しました。採点方法は明らかにされて
いませんが、加点法(=あるレベルに達したら合格)であることが
通説となっておりますため、旗色の悪い試問は諦めて降参し、
すぐに次の試問をしてもらう…のスタイルが良いですね。
また、途中で決して諦めず、最後まで打ち返すことが大切です。
技術士受験の都市伝説によると、口頭試験中に合格点に達したら
「技術士を取った後は何をしたいか?」の質問が出る…という
話があります。
今回まさにその質問が出たわけですが、そう言えば以前に電気
電子部門を受験した時にも同様の質問が出て、結果合格したこと
を思い出しました。まあ、この都市伝説は話半分で。。。
総監を目指して頑張られている方にとって、本稿が少しでも
お役に立てれば幸いです。
口頭試験に対して様々な対策を行って臨みましたが、先達の方々
が公開している口頭試験体験談の情報が大変役に立ちました。
そんなわけで、これから目指す人のご参考のため、僕も自分の
口頭試験の記録を公開しておこうと思います。
なお、過去に取得した一般部門の口頭試験の記録は、下記と
なります。(最新の一般部門の口頭試験では、過去とは採点方法
が変わっておりますのでご注意下さい。)
・技術士電気電子部門の口頭試験の様子
https://highbusy.blog.ss-blog.jp/2013-12-14
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■技術士総合技術監理部門(電気電子ー電子応用)
口頭試験
2021/02/28(日) @渋谷 フォーラム8
試験開始時刻:15:15
筆記論文を突破し、本日いよいよ、総監のファイナルステージ
に臨みます。一世一代の大勝負です。
遅刻は交通機関の乱れなども含め、いかなる理由でも認められ
ません。過剰に早く渋谷入りしました。渋谷駅着12:30。時間
調整のため、試験会場近くの貸会議室を予約してあります。
ロッテリアで昼食を買い、12:45に貸会議室に入りました。周囲
に気兼ねなく最後の追い込みができます。
食事をしながら自作の想定問答集を読んで記憶したり、食後は
面接のイメージトレーニングと発声練習などを行って過ごし
ました。14:45まで、みっちりと直前対策ができました。
貸会議室のアイディアは、事前に先輩からアドバイスを貰って
いました。他に、カラオケボックス内で練習する手もある
らしいですが、コロナ禍のため敬遠しました。
さて、試験会場のフォーラム8です。受付後、大会議室で待つ
ように指示されましたが、試験直前の受験者が集っており、
相変わらずの緊張感漂う重苦しい部屋でした。試験開始10分
前に、自分の受験する会議室の前に移動します。会議室前の
椅子に座って待っていると、前の受験者が出てきて、ほどなく
試験官が部屋に招じ入れます。
15:15、時間通りの試験開始です。コロナのため試験官も受験者も
マスク着用。間に透明な間仕切りがあり、双方で声が聞こえ
にくいという不便がありました。
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・試験官(3名)
左(A):小太り、50歳中盤か、大学教授風
中央(B):やせ型で白髪、60歳くらいか、学者風。
右(C):桂三枝似、50歳あたりか、技術屋風。
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B:そちらの椅子に荷物を置いて、前の席にお座り下さい。
B:では総合技術監理部門の口頭試験を始めますので、
受験番号とお名前をお願いします。
私:XXXXXX番 ○○○○です。よろしくお願いします。
A:では早速ですが、○○さんの書いた業務詳細について、
お教え下さい。一言で言うと、どのような業務ですか?
私:□□にフルセグTVの機能を搭載する設計について、
設計責任者として、業務を管理しました。
A:フルセグTVって、何ですか?
私:モバイル用TV用のワンセグに対し、フルセグはご家庭の
TVで見られるハイビジョン映像のTVとなります。
A:ああ、普通の家のTVのことね。
ソフトウェアは発売後にアップデートで対応したとのこと
ですが、ハードウェアはどのような点がこのプロジェクトの
ゴールだったのでしょう?
私:製品の設計を完了し、量産立ち上げを果たすことが
プロジェクトのゴールです。
A:プロジェクトのゴールの成果は、どのように確認したの
でしょうか?
私:設計については、評価を行い、チェックシートにより所望の
機能と性能が得られていることを確認しました。
量産については、問題ない生産品質で量産が立ち上がるところ
まで確認しました。
A:評価を行う、とは、どういうことでしょうか?
私:あ、はい。試作品を使って評価を行っております。
設計完了までに3回ほどの試作を実施しております。
A:ああ、途中で試作を行っているのね。量産までの間、
設計が要求品質を満たしているかどうか、どのように管理
しましたか?
私:各試作ごとにあるデザインレビューにて、顧客要求を満た
しているかどうかをチェックし、問題があれば次回試作
に反映し、最終的に問題無しの状態にて量産を開始できる
よう、管理して進めました。
A:量産が開始されたら、それで業務は終わりですか?
私:いいえ、高い品質で量産できるよう、工場に対してサポート
は行います。ある程度の期間は生産品質の推移はモニタして
いくこととなります。
A:量産ラインとかも作るのですか?
私:いえ、ラインは設計部門では作りません。設計部門からは
品質要求、検査要求を出すと、工場側のエキスパートが最適な
量産ラインを構築してくれますので。
A:わかりました。はい、私はこれで結構です。
B:それでは、改めてとなりますが、業務詳細について、総監の
視点での全体説明をお願いします。
私:私は2013年に□□にフルセグTV機能を内蔵するプロジェクト
の、設計責任者を務めました。
業務の課題は、求められる品質に対して、フルセグ視聴ソフト
ウェアの納期が間に合わないことと、フルセグのハードウェア
評価の工数が足りない、という2点でした。
前者は顧客と納期折衝を行い、発売日当日ではなく後日の
ソフトウェアアップデートによる対応を了承いただき、対応
しました。
後者は、他部門の人員工数を、OJTを提供する形で動員して
対応しました。結果、このプロジェクトを成功に導きました。
B:発売日の時期と、ソフトウェアアップデートの時期を教えて
下さい。お客様をどれだけお待たせしたのかなと思いまして。
私:2013年の6月に端末発売、8月にアップデートだったと記憶
しております。お客様を2ヶ月お待たせしたことになります。
B:アップデート後に発売されたこの製品は、最初からフルセグ
に対応されていたのですね?
私:いいえ、この製品については、アップデート後に新品を
ご購入されたお客様も、アップデートの作業を実施していた
だく形となりました。この機種の次の新機種からは、
キッチリと最初からフルセグに対応する形となりましたが。
B:なるほど、そういうことですね。どうでしょうか?
(試験官Cを見て)
C:うーん。これではあなたの業務がよくわからないんだよね。
実際何を管理していたの?
私:本プロジェクトにおいて、納期内に十分な品質を持った
製品を出せるよう、納期調整並びに工数管理を行いました。
C:納期を満たしました、と言っても、やっていることは能が
無い気がするんだけどね。あと、ここにはソフトウェアに
ついて、あまり深く書かれていないけれど。
私:私はソフトの専門家ではありませんが、メンバーにソフト
ウェアのリーダが居て、都度相談、意思疎通してスケジュール
等管理していました。ですが、あくまで私が上で取り纏める
役でした。
C:あなた、設計責任者なんじゃないの? 詳細を把握できて
いなかったのに、よく管理できたものだね。
私:立場上ハードウェア、ソフトウェアともに私が取り纏める
立場にありました。ソフトウェアについてはリーダーを信頼
して一任しておりました。ハードの方は上から下まで私が見て
詳細を把握しておりましたが。
C:ソフトウェア開発の規模は?
私:えーと、すみません。規模と仰いますと、どのような意味
でしょうか?
C:開発にかかる工数のことだよ、工数。何人月必要だったの?
私:社員2名で6カ月、計12人月となります。その下にオフショア
があり、外注も使っていましたが、トータルで掛かった総工数
までは把握できておりません。
C:そこを把握できていないとは、総監としてどうかと思う
けどね。
ソースコード全てを把握しろ、とまで言っているわけじゃあ
ないんだよ。でも総工数がわからない、じゃあ管理も何も
あったものじゃないでしょう?
私:はい。仰る通りです。詳細はソフトウェアのリーダーに
任せておりましたので。
C:たったの12人月で大丈夫なの?
下請けがどの程度かは知らないけど、期間が短か過ぎて、
まともなソフトが完成できるとは到底思えないな。
私:はい。仰る通り、一から作ったのでは完成はできないと思い
ます。下地として、既にワンセグTVの視聴ソフトウェアは完成
させておりましたので、その上でフルセグ機能を実装すること
で、この工数で達成できております。
C:FPGAは使ったの?
私:いいえ、既製品のTV Tuner ICを使用し、画像処理などは
□□が元から備えているプロセッサを使用しますので、
FPGAを使うことはありませんでした。
C:ああ、既に市販されている部品を組合せて使ったのね。
であれば、テレビなんて簡単にできちゃうんじゃないの?
工数が足りなくなるなんてことは無かったのでは?
私:実際には想定外のトラブルがありまして、工数が足りなく
なりました。
C:どのような想定外が、どうして発生したの?
私:周囲からのNoiseの影響で、TVの受信感度が落ちる問題が
発生しました。□□の中には様々なデバイスがあり、想定外の
レベルのNoiseにより、TVが妨害を受けてしまいました。
C:想定外と言ってもあなたね、設計時にあらかじめ予見でき
なかったの? シミュレーションとかちゃんと実施して
いなかったのでは?
作ってみるまでわかりません、では全然駄目だと思うん
だけどね。
私:ある程度のシミュレーションは実施しておりますが、
当時はそれほど高い精度で実施できたわけではありません
でした。特にNoiseのシミュレーションは、現在でも難しい
課題です。
C:ふーん、それで工数が足りなくなった、と。
私:はい。その通りです。
C:で、他部署の工数を動員したんだよね? ここで他所の
人を使って自部署と同一の業務の品質が担保できると思って
いたわけ?
私:確かに自部署のメンバーと比べ、スキルは同レベルでは
ありません。ですが、評価業務ですので、チェックシートを
使って一元管理するような情報管理を行うことにより、
抜け漏れ無く問題無い品質で進めることができました。
C:ふーん、専門では無い人をねー。ああ、あなたの経歴票の
中に技術士電気電子部門を取得した、と書いてありますが、
いつ取得しました?
私:2014年です。
C:今回の業務詳細に書かれている業務よりも後のタイミング
なのね。…私からは以上です。
A:2014年に電気電子の技術士を取得した後は、どのように
業務に当たっていましたか?
私:主に□□にフルセグTVを搭載するプロジェクトの設計責任者
を務めておりますが、自分の専門を見るのみならず、業務
全体を全て見て最適に進むよう技術監理を行っております。
A:このプロジェクトの意義として、監理が上手く行った、
ということ以外で評価できる点は何ですか?
私:業界初の試みを成功させた、という点が評価できると考えて
います。
A:業界初ということですが、そもそも今回のプロジェクトが
行ける、と事前に判断できた理由は何ですか?
私:それ以前の経歴で、ノートパソコンにフルセグTVを搭載する
業務を体験しておりまして、その時に成功していますので、
類似である今回の業務も行けると判断しました。
A:でも、実際は想定外のことが起こった、ということですね?
私:□□に搭載する、というところで知見が足りておらず、想定外
が生じてしまいました。
A:ソフトウェアは後日のアップデート、ということですが、
ソフトウェアに関して途中の管理とかはありましたか?
私:後日アップデートすることを前提に、量産時点であらかじめ
仕込んでおかなければならないファームウェア等もありました
ので、このタイミングまでにこの実装が必要、という管理を
キッチリ行って進めました。
A:はい、私はこれでOKです。
B:市場でソフトウェアアップデートで対応ということで、
お客様のところでアップデートに失敗する恐れは無かった
のでしょうか?
私:実際の市場でこのような事故はありませんでしたが、最初
のリスクアセスメントにおいて、確かにこのリスクは挙げ
ました。
対応方法としては、起動しなくなったセットは新品交換で
対応する、が最も妥当的な対応方法と結論付けました。
B:総監ですのでトレードオフについて当然管理しなければ
なりません。今回のプロジェクトにおいて、記載している事項
以外のトレードオフはありませんでしたか?
5つの管理全てを挙げる必要はありませんが。
私:設計業務ですので経済性管理内のトレードオフばかり
でしたが、例えば社会環境管理と経済性管理のトレードオフ
はありました。
低消費電力の回路設計により、地球温暖化防止に寄与できる
わけですが、今回は工数が足りず、低消費電力を追求した
回路を設計することができませんでした。
B:実現できないと、大きな問題があったのでしょうか?
私:いえ、消費電力が増えてしまうというだけで、プロジェクト
自体が失敗する、ということはありませんでした。
B:では、話は変わりますが、今回総監を取得したら、
今後何をしたいですか?
私:総監の受験動機ですが、私は将来子供達に科学技術の面白さ
や大切さを伝えるような仕事をしたいと考えています。
そのため、技術の最高峰である技術士の総合技術監理部門を
取得したいと考えております。
ゆくゆくは開業したいと考えています。
B:そのために、今行っていることは?
私:現在はどのように進めようか、考え中です。過去の話となり
ますが、数年前に、夏休みに小学生に技術を教える教室の
スタッフを務めたことがあります。ここで子供達に無限の
可能性があることに気付きました。
このような子供達に教えられる機会があれば、どんどん参加
していきたいと考えています。
B:なるほど、わかりました。それでは試験は以上になります。
お疲れ様でした。
私:ありがとうございました。よろしくお願いします。
- 計23分 -
今回の口頭試験は業務詳細に関する質問に始終しました。
筆記試験の内容、他の業務経歴について、コロナなどの今どき
のトピック、仮想事例などは一切試問されませんでした。
これはひとえに受験申込時の業務詳細の記載の詰めが甘く、
その弱点を突かれた形でした。申込時に受験は始まっている、
ということを改めて実感した形です。
試験官Cの質問に対して、防戦一方でしたため、試験中は不合格
を覚悟しました。試験終了後も、きっと不合格だな…と予期
しながら帰路に就きました。ですが、後日、この口頭試験再現を
書き起こしてみると、23分間とは思えないほど、かなりの量の
Q&Aをこなしていたことに気付きました。
試験結果は合格だったわけですが、試験官Bが助け舟的に様々な
質問を出して下さったことが大きかったと考えます。私が早口
だったことは悪い点でしたが、それでも沢山の問答ができた
という点では、少し有利に働いたと思います。
簡潔に答えて次々と質問を出してもらう、という手法が重要で
あることを改めて認識しました。採点方法は明らかにされて
いませんが、加点法(=あるレベルに達したら合格)であることが
通説となっておりますため、旗色の悪い試問は諦めて降参し、
すぐに次の試問をしてもらう…のスタイルが良いですね。
また、途中で決して諦めず、最後まで打ち返すことが大切です。
技術士受験の都市伝説によると、口頭試験中に合格点に達したら
「技術士を取った後は何をしたいか?」の質問が出る…という
話があります。
今回まさにその質問が出たわけですが、そう言えば以前に電気
電子部門を受験した時にも同様の質問が出て、結果合格したこと
を思い出しました。まあ、この都市伝説は話半分で。。。
総監を目指して頑張られている方にとって、本稿が少しでも
お役に立てれば幸いです。
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